Q.野菜を食べない代わりにサプリメントをとるのはどうですか?
A.サプリメントはあくまでも補完食品で、野菜の代わりにはなりません。
野菜でとらなくとも栄養素はサプリメントでとっているから大丈夫、と思っている方もいらっしゃると思います。
サプリメントは特定の栄養素を補う目的の場合は良いと思いますが、健康を保つ目的であればサプリメントが野菜の代わりとはならないでしょう。
野菜を食べるということは、その栄養素や機能性成分をまるごと摂取するということです。
少し専門的な話になりますが、食品の特性は大きく3つの機能に分類されます。
●一次機能…生命に必須な栄養素の供給源となること。体を作る、エネルギーを作る、体の機能・代謝を調整する。
炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルの五大栄養素や水分などを摂る理由が主にこの一次機能を得るためと言えるでしょう。
●二次機能…ヒトが食べるための嗜好性を良くすること。 味の良さ、色、香り、物性など。
有名なところであれば、色素成分のカロテン、リコペン、アスタキサンチン、クロロフィル、アントシアニンなどや、呈味成分の甘味成分、酸味、塩味、苦味、旨味、辛味、渋味、えぐ味などがこの機能に関係しています。食事を楽しく、おいしく食べるために大切な機能です。
●三次機能…生体調節機能といい、ヒトの健康や疾病予防に関わる成分を含んでいること。
昨今の健康志向に伴う特定保健用食品を含む機能性食品の多くがこの機能に注目したものです。
野菜や果物などの植物性食品は、五大栄養素のように生命に必ずしも必要なものではないですが健康や長寿に良いと言われ、非栄養成分である食物繊維とともに、いろいろな疾病の予防に役立つことがわかってきました。
この機能性をもった植物性成分を「ファイトケミカル」といいます。
たとえば、トマトなどに含まれるリコペンは、抗酸化作用や動脈硬化予防が報告されています。
他にもにんじんなどに含まれるプロビタミンAは抗酸化作用、ほうれん草やブロッコリーなどに含まれるクロロフィルは抗酸化作用やコレステロール調整、ごぼうなどに含まれるクロロゲン酸には血圧調整、血糖調整など、様々な機能性が報告されています。
ちなみに機能性をもった動物性成分は、「ズーケミカル」といわれ、魚のEPAやDHA、乳や鶏卵のカロテノイドなどが入ります。しかしズーケミカルは、動物がエサとして摂取した植物性のファイトケミカルに由来するものが多いとされています。
食品は上記3つの機能を持ち、私たちの健康を支えてくれています。
特に三次機能についてはまだまだ研究がなされている最中です。
例えばリコペンのように、二次機能の色素成分として知られていたものが、三次機能も有するものであることがわかってきました。
まだ明らかとなっていないものも含め機能性成分や栄養素が自然界にはたくさん存在しており、それらを食品から摂ることでまるごと吸収することができます。
野菜はビタミン・ミネラルの生命の維持(一次機能)のためだけではなく、嗜好性(二次機能)、健康の維持(三次機能)のためにも食べており、サプリメントだけでは生命の維持には役立つことができても、嗜好性や健康の維持についての機能は補うことが難しいのです。
8月31日は「やさいの日」です。
野菜を効率よく上手に食べるには、彩りの良い野菜をスープや炒めものなどにすることがおすすめです。
栄養素や機能性成分は楽しく、おいしい食事の中から吸収し、健康に役立てましょう。
参考文献:
中河原俊治編著「食べ物と健康Ⅱ 食品の機能」,三共出版,2013年
中村丁次監修「健康増進のしおり2014-2 彩り良く野菜を食べて、生活習慣病予防」,公益社団法人日本栄養士会,2014年