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『糖尿病』ってこんな病気

糖尿病の分類(日本糖尿病学会による)

糖尿病と糖代謝異常の成因分類
I. 1型
膵β細胞の破壊、通常は絶対的インスリン欠乏に至る
II. 2型
インスリン分泌低下を主体とするものと、インスリン抵抗性が主体で,それにインスリンの相対的不足を伴うものなどがある
III. その他の特定の機序、疾患によるもの
A. 遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの
B. 他の疾患,条件に伴うもの
IV. 妊娠糖尿病
妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至らない糖代謝異常

1型糖尿病

血糖値を下げるホルモンであるインスリンは膵臓のβ細胞から分泌されます。β細胞が壊されてインスリンがほとんど出なくなり、慢性的な高血糖を来した病態が1型糖尿病です。
発症や進行の仕方により、”劇症”・”急性発症”・”緩徐進行”の3タイプに分けられます。

劇症・急性発症1型糖尿病の場合には、のどの渇きが強く飲水が多くなったり、尿量が増えたり、急激な体重減少や全身がだるい症状が出たりした場合に疑われます。
一方で、緩徐進行1型糖尿病の場合には、ゆっくりと高血糖が進行することが多く、症状が自覚されにくく、健診などで異常を指摘されることもあります。

膵臓からのインスリンの分泌が足りない場合、速やかにインスリン注射を開始します。病態によっては、インスリン注射以外にも飲み薬(尿に糖を出す薬剤:SGLT-2阻害薬、腸での糖の吸収をゆるやかにする薬剤:αグルコシダーゼ阻害薬)も併用する場合があります。

当院では
血糖値、血中インスリン値、尿ケトン体HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー=平均血糖値)を院内で測定し、インスリン治療の必要性について速やかに判断を行います。
1型糖尿病では食事療法や運動療法に加えて、インスリン療法が必要になる方がほとんどです。インスリン自己注射や自己血糖測定について説明や支援を看護師が中心となり行います。医師の診察だけでなく、管理栄養士・看護師との面談も適宜行い、個々の患者さんの生活に合わせたインスリン注射の調整を行い、血糖値の安定化や生活の質の改善を目指します。

【1型糖尿病の特徴】

  • 口渇や多尿などの症状が急激に出現しやすい
  • インスリン分泌の枯渇や低下が原因
  • 迅速な診断と治療が必要
  • インスリン注射治療が基本的となる

2型糖尿病

血糖値を下げるホルモンであるインスリンの出る量が低下したり、インスリンの効き目が低下したりしてしまうことで、慢性的な高血糖を来した病態が2型糖尿病です。
インスリンの出る量や効き目には遺伝的な要因が関わっていると言われており、糖尿病の家族歴がある方に発症しやすいです。また、食事内容や運動量の低下や肥満などが関連することがありますが、関連がない場合も少なくありません。

当院では
血糖値、血中インスリン値、尿ケトン体HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー=平均血糖値)を測定し、インスリンの出る量やインスリンの効き方を確認した上で、病態に合わせた治療法を提案しています。

2型糖尿病の治療では、食事療法や運動療法に加えて薬物療法があります。薬物療法は選択肢が多くありますが、患者さんごとに病態が様々であるため、個別に最適な治療法を選択することが重要になります。
飲み薬では「インスリンの出る量を増やす薬剤:DPP-4阻害薬、グリニド薬、スルホニル尿素薬など」、「インスリンの効きを良くする薬剤:経口GLP-1受容体作動薬、ビグアナイド薬、イメグリミン、チアゾリジン薬など」、「尿に糖を排泄する薬剤:SGLT-2阻害薬」などの種類があり、注射でも「インスリン注射」や「インスリンの効きを良くする注射:GLP-1受容体作動薬」などがあります。医師の診察や管理栄養士・看護師との相談を通して、個々の方々の生活に寄り添いながら、食事療法や運動療法についても助言や支援を行い、血糖値の改善を目指します。

【2型糖尿病の特徴】

  • 無症状や健診などで発見されることが多い
  • 家族歴がある方に多い
  • 食事・運動療法の効果が出やすい
  • やせ形から肥満まで様々なタイプが含まれる

その他の特定の機序、疾患によるもの

遺伝子異常(インスリン分泌に関わるものなど)や、他の疾患(膵臓の病気やインスリン以外のホルモンの異常、薬剤によるものなど)に合併するものです。治療は2型糖尿病に準じて行われますが、薬剤の中止や他の疾患の改善に伴い良くなる場合もあります。

妊娠糖尿病

妊娠中に初めて発見または発症した糖代謝異常と定義されています。
妊娠前から既に糖尿病が存在している「糖尿病合併妊娠」や、妊娠前に見逃されていた糖尿病などが主に含まれる「妊娠中の明らかな糖尿病」とは異なります。

胎盤から出る一部のホルモンはインスリンの効きを弱めます。
膵臓からインスリンを十分出せる妊婦さんは血糖値を下げることができますが、インスリンの分泌が少ない妊婦さんでは、血糖値が上昇してしまい妊娠糖尿病となります。糖尿病の家族歴のある方は妊娠糖尿病になりやすく、全妊婦さんの12%程度(妊婦さん8〜9人に1人)といわれており、珍しい病気ではありません。

妊娠糖尿病により、母体の血糖値が高い状態が続くと、母体合併症(妊娠高血圧症候群、流産、早産、羊水過多、巨大児に伴う難産など)、赤ちゃんの合併症(新生児低血糖、巨大児、胎児発育遅延など)、赤ちゃんの成長後の合併症(肥満、糖尿病)などの問題が起こりやすくなるため、非妊娠時よりも厳しい目標での血糖管理が必要となります。

妊娠に必要なカロリーとバランスの取れた食事療法(妊娠前のBMIによって異なります)が治療の基本となり、その評価は自己血糖測定で血糖値の推移を確認します。糖質制限は赤ちゃんの発育に関して長期的な予後が不明確であり、当院では推奨していません。食事療法で目標となる血糖値(食後1時間で140mg/dl未満、食後2時間で120mg/dl未満)を達成できない場合は、インスリン注射による薬物療法を行います。妊娠中は胎盤から赤ちゃんへ移行してしまう危険のある、飲み薬による治療は行いません。

妊娠糖尿病は出産後も糖尿病への移行リスクが高く、産後5年で約20%、10年で約30%の方が糖尿病へ進行すると言われています。妊娠・出産から出産後を含めた、長期的な経過観察が必要となります。

当院では、医師の診察、管理栄養士・看護師との面談を行いながら、食事療法や血糖管理について相談し、産科と連携しながら診療を進めています

【妊娠糖尿病の特徴】

  • 妊娠中の高血糖(糖尿病の診断までには至っていない)
  • 糖尿病家族歴がある方に多い
  • 食事療法と薬物療法(インスリン療法)が中心
  • 出産後の糖尿病への移行リスクが高い

その他の主な代謝性疾患

脂質異常症(高脂血症)

狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの「動脈硬化性疾患」をひき起こす原因の一つです。肥満や運動不足に加齢(特に女性の閉経後)を伴うと発症しやすく、遺伝的要素が関連する場合もあります。
内服治療が有効で、効果と副作用を血液検査で確認します。動脈硬化の程度を評価するため動脈の硬さと厚さを調べることも重要です。当院ではすべて院内検査で実施可能で当日での結果説明や栄養相談も受けることができます。

高尿酸血症(痛風)

血液の尿酸値が高くなる病気です。体質や食生活が原因となります。痛風発作を起こすことがあり動脈硬化や腎障害(痛風腎と呼ばれます)尿管結石の原因にもなります。内服治療を行うとほとんどの方の尿酸値は正常化しますが食事療法が有効な場合もあります。治療効果判定、薬剤副作用の確認採血、動脈硬化や腎機能の評価など院内の検査で対応します。

反応性低血糖症

食後2~3時間で起こる倦怠感・眠気・発汗・めまい・ふるえ・空腹感は反応性低血糖症の可能性があります。
この病気は(1)糖質のとりすぎ(2)血糖値を下げる働き を持つインスリンの効きが悪い体質、インスリンの分泌の遅れから起こります。
3時間ブドウ糖負荷試験で診断を確定します(当日結果が出ます)。
ダイエットをしている女性で食生活の偏りから発症することが多く(特に糖質制限ダイエットを行っている方)、境界型高血糖(今後、糖尿病を発症する可能性を有する高血糖状態)の状態でも起こりやすくなります。適切な食生活で症状が改善することもあるため、食事療法(栄養相談)が有効です。
こちらの記事もご参考にしてください。

高血圧症

現在「国民の3人に1人は血圧が高い」と言われています。高血圧は狭心症や心筋梗塞、脳梗塞や脳出血、心不全や腎不全など多くの病気の原因となります。
体重減量や減塩食でも血圧は下がるため、まずは食事療法と運動療法を行います。それでも血圧が下がらない場合には降圧薬を使用します。現在優れた降圧薬が多くありますので患者さまの状態に合わせた薬剤を選択します。薬剤の副作用を血液検査で確認し、動脈硬化や腎機能についても院内の検査で評価を行います。

また高血圧症の中に内分泌の病気が潜んでいることもあります。
例えば「原発性アルドステロン症※」は高血圧症の5〜29%に存在すると言われ、頻度が比較的高い高血圧症の原因となります。
当院では原発性アルドステロン症の疑いが否定できない方に対して、ホルモンの血液検査を行うことができます(結果説明は後日となります)。特に若い方では治療前に内分泌検査を行う必要があります。

原発性アルドステロン症
副腎皮質ホルモンの一種である「アルドステロン」が増えることで高血圧や電解質異常を起こす病気です。若年性高血圧や難治性高血圧の原因となることがあり動脈硬化や腎障害を合併しやすい内分泌疾患です。原因は副腎腫瘍や過形成で片側の副腎腫瘍は腹腔鏡で外科的に切除します。両側腫瘍や過形成の場合には抗アルドステロン薬を内服します。

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